
2018年6月29日に参院本議会で「働き方改革関連法案」
(正式名称:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案)
が可決・成立しました。
記憶に新しいところによると、2015年12月に大手広告代理店電通の
若手女性社員が過労死でこの世を去って早2.5年が経とうとしています。
この事件は、大手電通関連のニュースであったので、“電通”という会社の労働環境の実態が明らかにされて、
日本で働く“会社員”と呼ばれる人達に“働く”ということについて、様々な問題提起をしたと感じています。

そしてまた、この事件以降も 世の中の流れとして、
“ワーク・ライフ・バランス(WLB)”という考え方が
社内に紹介されたり、“残業時間の削減”の命題と共に、
凄く厳しく残業時間を取り締まられたりしているにも関わらず、
過労による自殺と思われる事件がニュースで取り上げられます、
いまだに無くなることがありません。
なぜ、このような事が勃発するのか、心理学的考察を入れながら、私の経験と共に考えてみました。
私が新入社員(医療系営業職;詳細はプロフィール)であった頃、
平均退社時間が22:00~22:30頃でした。私と同期入社で、
違う営業所配属の人達は、退社時間が0:00を過ぎる時もあるという状況であって、
全体会議(東京都内を担当している営業所員が一堂に会する会議)に出席して
色々な方々と話をしてみて、“暗黙のルール”のようなものの存在があり、それに従わないと、
様々な側面から恐怖を感じさせられ、強制的に従わされることが認識できました。
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上司より先に退社してはいけない
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売り上げ、利益を確保しなければ、ゴミ以下の扱いを受ける
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どんなに忙しくても、どんなに疲れていても、上司の雑用は率先して手伝わないといけない
この3か条を見て頂いても、若手営業員時代には多くの負担が掛かっていました。
でも、私は“しんどいです”とか“無理です”とか“出来ません”とは言えなかったんです。
なぜなら、
“その営業組織の一員として認められたかった”
“使えない奴と見られたくなかった”
などが
思い当たります。
それでも、不意に“暗黙のルール”から逸脱するようなことが起きると、
項目②に挙げたように、ゴミ以下の扱いを受け、
恐怖心を誘発されて、強制的に従わされます。
この組織のベテラン社員達は、繁忙期になってくると、平日長時間勤務に加えて、
休日出勤が当たり前になってきます。
従って、家族サービスが出来なくなり、その結果、奥様との不仲になるそうですが、
その状況をとても嬉しそうに、自慢げに語っていたことが私にとっては印象的でした。
このベテラン社員は
“俺、平日、長時間勤務だし、休日出勤だって厭わない。
売り上げ、利益だって一人前に上げて、会社に貢献しているんだから、賞賛、承認されるべき”
“一所懸命にやって、結果を出し続けている俺は優遇されるべき、承認されるべき、賞賛されるべき”
“売り上げ、利益を上げられない奴らは辞めるべき”
なんて思っていたと思います。
このベテラン社員達は、長年蓄積された売り上げを上げるための
方法論(一所懸命働く、長時間残業をして働く、休日出勤をして働く)を遵守してきて、
売り上げ/利益ノルマを達成して、会社から、周囲の人達から承認され、
評価され、賞賛されていたことと思われます。いわゆる“成功体験”をした訳です。

成功体験は、一見、ポジティブなように思いますが、
成功した瞬間、
脳内にドーパミン/アドレナリンなどが分泌されて、
強烈な快感に支配
されてしまいます。
そして、この快感は記憶と共に、記憶回路に格納されて、
同じもしくはそれ以上の快感を体験するために、
繰り返し同じ行動をさせるように仕向けられていきます。
もちろん、このメカニズムに乗っ取られているご本人は気が付きません。
そして、気付かないうちに、さらに成功体験をした際の行動を“成功するパターン”として繰り返し、
“強化学習/強化行動”をしていきます。

あるとき、時代を支配する流れが変化して、
今までに当たり前に必要とされていた
因子(一所懸命働く、長時間残業をして働く、休日出勤をして働く)が
最重要でなくなり、今まで全く注目されていなかった
因子(イノベーション、創造性、独創性など)に
注目が集まっても、
成功体験を一度でも味わってしまったことがあると、
頭で論理的に理解していても、
過去の成功体験を忘れること/捨て去ることが出来ず、過去とは
流れが変わっているにも関わらず、学習した成功パターンを成就するために、
なお一層、粉骨砕身、猪突猛進に努力し過ぎてしまうと状態が起きている、
これが表題にお示しした“働き方改革”を推進しづらくしている一因であると考えます。
今回は営業組織が持っている
“集合意識”(暗黙のルール)とそれを破る際に感じさせられる“罪悪感”、そして、
“成功体験”をすることによって得られる“快感感情”の支配、
それから逸脱する際の恐怖心から述べさせて頂きましたが、次回は個人を支配する、
“承認されたい”“重要な存在でいたい”“優秀な存在であると認知された”などの観点から続きを書きたいと思います。
今回はこの辺りで、最後までお読み頂いて、ありがとうございます。