
心理カウンセラーや
セラピストの世界では、
よくこんな問いかけがあります。
「一番つらかった自分に、
どんな言葉をかけて
あげたいですか?」
そう聞かれると、
「もう過去のことなのに、
今さら言っても
何も変わらないでしょ」
と思う方もいるかもしれません。
でも、実はそうではありません。
大人になった今でも
私たちを苦しめている
ものの多くは、
子どもの頃に
親との関係で
作られた
“思い込み(ビリーフ)”
だからです。

子どもの頃に身につけた
思い込みの例
子どもの頃、
次のような体験を
したことはありませんか?
・両親がケンカをすると、
家族が壊れないように
“自分が仲裁役にならなきゃ”と
思っていた
・お母さんに
褒めてもらいたくて、
ずっと
「いい子」「できる子」を
演じ続けた
・厳しいしつけを受け、
甘えたり感情を出すことを
許されなかった
・勉強や部活で
成果を出すと
両親が喜んでくれたから、
「もっともっと頑張らなきゃ」と
努力し続けた
・お母さんの
機嫌が不安定で、
いつ怒られるか
分からないから、
家では常に緊張していた
このような状況で子どもは
必死に生き延びるために、
「次はもっと頑張ろう」
「同じつらい思いを
しないようにしよう」
と戦略を立てます。
その戦略がうまくいくと、
それが
絶対ルール=思い込み
となり、
心に刻まれていくのです。

大人になっても続く思い込み
こうして身につけた
思い込みは、
環境が変わったあとも
無意識に働きます。
・「私がしっかりしていれば、
周りは大丈夫。
だから弱音を
見せてはいけない」
・「いい子でいなきゃ。
自分の気持ちは
我慢しないと」
・「子どもっぽく甘えてはダメ。
感情をそのまま出す
なんてもってのほか」
「今の自分ではまだ足りない。
もっと成果を出さないと」
「お母さん(誰か)の
機嫌を取らなきゃ、
自分の居場所がなくなる」
子ども時代には
役立ったこのルールも、
大人になった今では
あなたを苦しめる
原因になってしまうのです。

では、どうすればいい?
その方法の一つが、
「過去の自分に
声をかけてあげること」
です。
あの頃、
一番苦しかった
自分を思い浮かべて、
今のあなたが
優しく寄り添うように
言葉をかけてあげてください。
たとえば…
・「本当によく頑張ったね。
でも、もう頑張らなくても
大丈夫だよ」
・「そうだよね、その通りだよね」
・「すごくつらかったよね。
大変だったよね」
・「ありのままで大丈夫だよ」
・「あのときは
そうするしかなかったんだよね。
よく耐えたね」

内側の対話があなたを癒す
人は普段から
自分の心の中で
“内なる会話”
をしています。
もしその声が
「どうせダメだ」
「また失敗する」
といった否定的なものなら、
自己肯定感は
どんどん低くなってしまいます。
だからこそ、
当時の自分に優しく声を
かけ直すことが
大切なのです。
それは、
過去を変えることではなく、
過去の自分を
認めて癒すこと。
続けていくうちに、
過去のつらい記憶に
対する感覚が少しずつ和らぎ、
心が軽くなっていくはずです。
最後に
あなたがあの時言って
もらえなかった言葉を、
今のあなたが
届けてあげてください。
その優しい声こそが、
これからの人生を
もっと自由にしてくれる
力になります。