八王子ダルクフォーラム② 孤独という名のストレス

前号では、

106日(土)に行われた、

 

八王子ダルクフォーラム

参加させて頂いた概要を

 

書かせて頂きました。

 

その際、基調講演として、

国立精神・神経研究センター 

 

薬物依存症センター

センター長 

 

松本俊彦先生から

とても興味深い研究結果を

 

拝聴する機会が

与えられましたので、

 

このことについて

シェアさせて頂きます。

 

とても興味深い研究内容

というのは、

 

“孤独と依存症”の関連

について示唆している

 

研究紹介でした。

 

その研究は、

カナダ;

 

サイモンフレーザー大学 

ブルースKアレクサンダー教授の

 

グループによって、

1980年に発表された

 

“ネズミの楽園”の

実験です。

 

この“ネズミの楽園”の

実験の詳細は下記です。

 

背景・仮説:

薬物依存性は、

 

1960年代に

アメリカ;スタンフォード大学の

 

アブラム・ゴールドシュタイン教授

グループは、ネズミを使った

 

実験から薬物依存の

原因を追及しました。

 

実験結果から薬物中毒は

薬物自体の成分が原因だと

 

結論づけた

ゴールドシュタイン博士は

 

「ヘロイン中毒のネズミは、

(多くの薬物中毒者のように)

 

社会に反発しているわけでも

社会経済情勢の犠牲者で

 

家庭崩壊の産物でも

犯罪者でもありません。

 

ネズミの行動は

脳内の薬物成分に

 

コントロールされている

だけです」

 

と語りました。

 

このゴールドシュタイン博士の

見解は広く社会に知ら

 

れ一般的な見解になりました。

 

この研究発表によって、

“正の強化”の定義が

 

出来上がりました。

 

つまり、

一度でも薬物を使うと、

 

脳内の情報伝達物質の

回路(シナプス)が

 

過剰に形成されて、

快楽物質ドーパミンが

分泌される。

 

人間がある行動をとった時、

もしくはある物質を

 

摂取した時に

強烈な快感が伴うと、

 

再び、その快感を

得ようとして、

 

自らの意思ではやめられない、

依存症状態になっていく、

 

と考えられていました。

 

しかし、

 

“ネズミの楽園”実験では、

“負の強化”の可能性を

 

示唆しています。

方法:

 

32匹のネズミを無作為に

居住環境が全く違う

2群に分けます。

 

A群(植民地ネズミ)は、

1匹ずつ鉄の檻

(研究用ケージ)に

隔離されて、

 

B群(楽園ネズミ)では

16匹全頭雄雌混合で、

広々として住みやすく、

餌は好きな時に

好きなだけ与えて、

 

その敷地内には

ウッドチップが

 

敷き詰められて、

温かくて、

 

ところどころには、

 ネズミがかくれんぼや

 

適度に運動できる遊具を

配置して、

 

各々のネズミが自由に、

 触れ合ったり、

 

交配できる環境を

整えました。

 

観察期間は57日間。

 

 

そして、AB群両方に、

 

普通の水と

モルヒネ入り水

 

を与えました。

 

モルヒネは

強力な鎮痛・鎮静作用が

 

ありますが、強い依存性があり、

水に溶かしても

 

苦くてとても

飲めたものでないので、

 

大量の砂糖を水に溶かして、

その液体にモルヒネを

 

加えて、

AB群両方に与えました。

結果:

 

A群(植民地ネズミ)は、

孤独な鉄の檻

 

(研究用ケージ)に

隔離されて、

 

ずっと

 

モルヒネ入り砂糖水を

頻繁に、大量に摂取して

 

酩酊していました。

 

それに対して、

B群(楽園ネズミ)は

 

他のネズミ達と

じゃれ合ったり、

 

遊んだり、交尾を

したりして、

 

モルヒネ入り砂糖水を

ほとんど飲まず、

 

普通の水を飲んでいました。

 

A群(植民地ネズミ)に

対して、実験期間の

 

途中で、

モルヒネ入り砂糖水を、

 

モルヒネをいれた

苦いままの水に

 

変更しても、

普通の水は飲まずに、

 

苦いモルヒネ水を

摂取し続けました。

 

この結果から、

薬物依存は

 

“正の強化”から

導かれるのではなく、

 

 “負の強化”劣悪で、

孤独な鉄の檻

 

(研究用ケージ)に

隔離されることで、

 

 自分の自由を

奪われる環境に

 

身をおかざる負えない

状況から

 

少しでも回避したい、

自らを

 

麻痺させたいという

思いから

 

成立するのではないか、

という可能性を

 

示唆しました。

 

そして、この実験には

まだ続きがあります。

 

A群(植民地ネズミ)

から1匹だけ、

 

B群(楽園ネズミ)の

居住環境に

 

移動させました。

 

移動させた直後は、

このネズミは他の

 

ネズミ達と

じゃれ合ったり、

 

遊んだりすることは

なかったそうです。

 

しかし、

 

時間が経過するに

つれて、じゃれ合ったり、

 

遊んだり、交配したりする

変化が見られ、

 

さらに、

 

あれだけ消費していた

モルヒネ水を一切飲まず、

 

通の水を飲むように

なっていった

 

ということです。

結論:

 

薬物依存からの回復は、鉄の檻に閉じ込めて、“孤独”状態で行うことではなく、

 

孤独を感じさせない仲間・グループがあり、その中で“つながり”を感じることが出来れば、

 

治癒されていくものである。

まず、

 

この実験が私達人間に

訴えかけているものは、

 

    薬物依存は、

“正の強化”ではなく、

“負の強化”によって、

発生している

 

 

 

 

    薬物依存状態に

なったとしても、

仲間の“つながり”の中で、

もう一度、

自身を取り戻すことが出来る

 

であるが、

この“負の強化”の

原因である

 

“孤独であること”、

“つながっていない”

 

などの

 

感じる症状は、

私のところに相談に

 

いらっしゃる

方々と全く同じで、

 

その方々は

 

“ひとりぼっちで

寂しい”

 

とか

 

集団の中にいる

のが嫌”

 

とか

 

“他人と親密に

なれない”

 

とか

 

“他人を信用できない”

 

などの

症状を表現されます。

 

 

薬物依存は、

その症状をたまたま薬物を

 

使って、回避、

麻痺させていただけで、

 

その他の依存対象

(タバコ・コーヒー・

スイーツ・激辛料理・

買い物・セックス・

窃盗・痴漢・暴力など)を

 

変化させて、

人間は依存性を

 

持っていると考えます。

 

“ひとりぼっちで

寂しい”

 

とか

 

“集団の中にいる

のが嫌”

 

とか

 

“他人と親密に

なれない”

 

とか

 

“他人を信用

できない”

 

などの

 

症状でお悩みの方、

一度、私にご相談くださいね。